雪が降らなかった理由検証

先週木曜日関東を中心に雪が予想され最悪の場合前回よりも積もるおそれがあると予想していましたが、結果都内に関してはみぞれとなり、予想していたほどは積もりませんでした。ただし、降ったみぞれが凍結し次の日の朝に事故が多発しました。

今回、3日前の段階から3つの要素で雪と予想していました。

「南岸低気圧であること」

「前回よりも上空700m付近の寒気が強いこと(雪の目安)」

「夜には上空5300m付近にこの冬一番といえる強い寒気が関東上空にくること(天気が荒れるおそれ)」

 

このため、降り出しから雪の可能性があり、特に夜は雪が強まったり雷が鳴るようなことが起こるのではないかと懸念していました。

気象庁は、木曜の朝の予想で関東南部で多いところ10cmの雪が降ると予想していました。(積もるわけではなく降る量)

これはよく、防災のため大げさにわざと言っていると思っている人がいるかもしれませんが、そうではなく気象予測モデルによって計算された値です。場合によってはこれ以上降ることもあります。

なぜ、予想どおりにいかなかったのか?

僕も前日の朝までは予想に自信がありました。が、前日の午後になると雪の降る量にトーンダウンの兆しがでてきました。ただし、この段階ではトーンダウンを採用するまでにはいきませんでした。

当日になると、雪の降る量は前日までに予想していたよりはトーンダウンが顕著になってきました。

結果降らなかった理由は、南岸低気圧の発達が予想していたより弱く、しかも本州から離れて通った。そのため、降水域がそれほど広がらず、かつ、降水強度も弱くなった。

雪が降って積もる時のイメージって降り始め「ぶわーっ」て強まりますよね。そのあとどんどん積もっていきますよね。弱い雪やみぞれが降り始めからダラダラ続くときは、一気に雪になりきれないのです。

上空から雪が降ってくるときは地上に届くまでに多少解けます。液体(雨)に変わる「融解」と液体から気体に変わる「蒸発」この2段階を踏むことで地上付近の温度を下げる効果があります。

雪が「ぶわーっ」て一気に強まるときは、最初に地上付近の熱を一気に奪うのでそのあと降ってくるものが雪のままになりやすいのです。地上気温は1.5℃ラインといわれ、それを下回ると雪のまま降ることが多いです。(その時の相対湿度にもよりますが)

今回の場合は、上空の雪が強まらず地上付近では中途半端のみぞれが弱く降ったりやんだりし、そのため地上付近の温度を下げる効果が弱かった。加えて相対湿度は高くなり雪に変わりにくくなった。

地上気温の「1.5℃ライン」をぎりぎり下回らない時間は続き、都内に関してはほとんどみぞれや雨で終わりました。

 

振り返って反省すると、

予想にブレ幅があることをもっと伝えていれば、天気予報の結果としての外れた感はなくなったと思います。ただし、天気コーナーの限られた時間でその一言を加えるよりもほかに注意喚起など言うべきことがあればやはりそちらを優先してしまいます。さらに、「雪になるかならないかわかりません」では、自然に謙虚ではありますが天気予報にならないと思うのです。その時の手に入る資料をフルに使って解析結果を出すのが気象予報士だと思うのです。ブレ幅の可能性にやたら時間を割いてただのお天気ショーになってしまうと、見ている人は結局どっちなの?となってしまい役に立たないのではないでしょうか。お天気ショーをやって喜ぶのはテレビ局だけで視聴者には役に立たないと思うのです。

バシッと予想をし、結果当たる。これがベスト。予想にブレ幅がある時に情報性の優先順位が高ければブレ幅を伝える。「最新の天気予報で改めて確認してください」と。台風の時はこう伝えることが多いですね。

台風の場合はブレ幅で悪くなると災害に繋がるので言及しますが、今回のような雪の場合降らずにすむブレ幅をわざわざいうのは優先順位として下がってしまいました。前日の時点で2割くらい降らないかもしれないと考えていても、注意するにこしたことはないと優先してしまうのです。ただし、降らずにカラ準備になってしまうというご迷惑をおかけしてしまうのならば、ブレ幅があることをもっと慎重に伝えておくべきだったのかもしれません。

今回の雪に関しては、僕の手に入った資料を解析する限りは雪を予想しましたが、積もらない予想をしていた気象予報士の方もいましたので、もっと別の資料も手に入れてより慎重に予想するということが勉強させられました。簡単にいうと自らの予報の精度の未熟さをまだまだ感じさせられました。

これからも放送ではベストの情報をお伝えしていきます。そしてもっと当たる天気予報、役に立つ天気予報を目指してお伝えします。

 

だらだらと書きましたが、自分の反省のためにここにメモを残しておきました。天気予報が外れたのにみなさんが優しいので、自らを戒めておきました。