読書感想【ありえない仕事術 上出遼平著】

ありえない仕事術

この本との出会いは、youtubeで上出さんが出演しているのを見て知りました。

テレビマンが書く仕事術の本、それに仕掛けられた裏展開。

カバーを外すと、正義という文字が脆く崩れているデザインになっています。

最後まで読み終わると、その意味がじわーっと分かってくると思います。

この本のタイトルは、あえてビジネス書に置いてもらうためと著者が言っていた意味が読了後分かります。ビジネス書を読むような人が手に取ってしまって読み終わったあと、もやもや考えてほしいのだと。

本の冒頭では、世の中にビジネス書が数多あり、それ自体がひとつのビジネスと化している現実を指摘し、それらを駆使して生きて仕事をしていても、皆がみな、上手くいくわけではないと。そこで、あえて自分がマスコミにいた時の仕事術を紹介してくれます。これが結構役立つ知識なんです。でも、これは1章で本著の4分の1しかなく、4分の3を割いた2章の前振りになるんです。

仕事術みたいなことを自分の柱にして生きていくと、気づいたら変な方向に行ってやしないか。間違った真面目さ、絶対的主観をもってしまう「正義」の怖さ。これらが第2章で小説のような、エッセイのような感じで書かれています。

「正義」は諸刃の剣で、誰かを助けることもできるし、誰かを傷つけることもできる。

確かに、歴史をみても、社会をゆるがす大きな事件ほど、人間を複雑にしているのはこの「正義」の感情だと自分も思います。

テレビの現場にいる人間として、めちゃくちゃ理解できる部分が多くありました。

普段、自分がワイドショーや報道で葛藤して苦しんでいる部分、と同時に仕事として思考パターンに共感する部分に大きくうなずきながら、読了後、めちゃめちゃもやもやした気持ちになりました。笑

これを他の人も見るべき、おすすめという「正義」の感情はありません。

でも、この居心地の悪さ、口に広がる苦さを、一緒にマスコミで働いている誰かに共有したい!

なんか同じしんどい感覚を味わってほしい。笑

今世の中に必要なのは、このもやもや感ではないかとも思う今日この頃です。

正義なんてかざすものではなく、個々人が内包するものでいい。仕事でも、政治でも、宗教でも、正義がかざされだすと、まずは自分の中の正義の感覚を感じて大切にしようと思いました。

ちなみに、本著はビジネス書としても勉強になることが多々あります。そこがまた一周回ってシニカルで著者のオシャレな演出だとも思います。